3分で分かる『論理哲学論考』と21世紀を生きる私達
『論理哲学論考』
20世紀の哲学者ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインが生前刊行した唯一の哲学書。
哲学の問題は言語の論理に対する誤解から生じる
哲学書による哲学の否定。
『論考』とも称されるこの本は、哲学史に衝撃を与えました。
今回は『論考』から学ぶ現代に生きる知恵を一緒に紐解いていきましょう。
1.本の概要
2.ここは覚えて帰って! Shiraneのワンポイント
3.明日から実践できること
1.『論考』を1000字で解説!
〇著者の意図
まずこの本は
「論理的誤解を与えない言語とは何か?」
という著者の疑問を起源とします。
そのため、本書はその疑問に対する答えを示した本の作りになっています。
「世界は何で出来ているのか」
「科学の条件とは」
こういった抽象的なことを思考しながら、上の一貫した問いへの回答を著者なりに試みています。
〇唯一無二のスタイル
この本の大きな特徴の一つは、その”書き方”にあります。
文頭に番号をふり、文章を箇条書き形式で書く独自スタイル。
法律の条文における〇条‐△項‐□号と似ています。
このように文章を独立化させることで、
例)
1-2-1「文章1-2で話した○○は△です!」
1-2-2「(1-2-1を受けて)、△は✖とも考えられる」
といった思考の深堀が何度もなされています。
〇世界を知ることは言語を知ること
彼独自のアプローチによって、本書では度々言語の問題に直面します。
- 意味が複数あるから誤解が生じる
- 単語は単語そのものを説明することができない
世界を俯瞰するにあたって著者は言語の不完全性を指摘します。
哲学は言語を介して行われます。
そのため、言語(ひいては論理)への探究をすることは哲学のあり方を問い直します。
〇彼の哲学の行きつく先
彼は問いを続ける中である一つの考えに辿り着きます。
価値ある言葉ははっきりと真偽が分かる。
そのため明晰に真偽を語りえない哲学には常に誤解が潜んでいる。
つまり、哲学的な問いは無意味(ナンセンス)なものであると批判します。
最後に哲学行為への再定義を行い、彼の主張は幕を閉じます。
- 話の途中自身の先生(ラッセル)の話にいったり
- 専門的な話に飛んだり
と突飛な話を展開するこの本。
ただ一貫して、
完全な言語とは何か
これを論理学者という立場で哲学的に探究したのが本書でされたことです。
2.覚えておきたいキーフレーズ
P114の一節にこんな文章があります。
「私の言語の限界が私の世界の限界を意味する」
多くのケースにおいて、言葉なしに思考することはできません。
例えば、Pilotのペンを買おうにも
ペンとは、パイロットは何か?
といった欲求を一度言葉に変換する必要があります。
また、知らないことを調べることはできません。
Google検索がそう。
仮に、パリオリンピックの開催日を調べる場合、検索時点においていつ開催されるのかを知っているは必要はありません。
ですが、
- パリ/オリンピックがあること
- 将来開催されること
の2点を言語として知っていないと調べようがありません。
これは検索エンジンに限らず、誰かに聞く場合も同様です。
言語の限界は思考の限界
思考できないことは、現実もフィクションとしても存在さえし得ない。
ここに私達の世界の限界があります。
彼はこの言葉を哲学の過程で残しているため、厳密には別の意味合いを指します。
(論理的に正しい言葉の真偽を求めている)
ですが、思考するには言語を知っていることが不可欠である。
このことに疑いの余地はないでしょう。
3.正解は答える前から決まっている
『論考』は、私達に「問いを立てる力」について考えさせます。
2024年、自分で答えを出す必要がない時代が来ました。
問いを与えられれば答えも与えられる
対話型AIや検索エンジンの発展で調べればすぐ答えが分かり、情報化社会と呼ばれるほど至る処に情報が溢れています。
その中でより自分が求める有益な情報を見つけるにはどうすれば良いのでしょうか。
そこに私は、情報を導く「問う力」が求められているのではと思います。
「そもそも哲学って意味あるの?」
彼が哲学を哲学し直したように、思考を一つずつ深ぼってみる
これがやり方のヒントです。
りんごを見た時に
→りんごはの赤さに気づく
→その赤さの由来を調べる
これだけでもリンゴに対する理解は深まるはずです。
『論考』にはこのような言葉があります。
「セカイの中には価値は存在しない」
p144
一般的に物の価値は人が決めます。
情報過多の現代の中で自分にとって大切なものを見つけるには価値を発掘する力。
つまり、問うことに現代を生きる術があるのでしょうか。
Fin
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〇取り上げた本の紹介
一般的に哲学書は抽象的な話が多く、実生活に活かせないと思われがちです。
しかし時として、はっとさせられる考えが散りばめられているのが哲学書ではないかと思います。
『論考』もその一つ。
- 哲学者/ヴィトゲンシュタインに興味がある
- 論理学について触れてみたい
- 今まで出会ったことない新鮮な考えに触れてみたい
そのような方はぜひ本書を直接読まれてみてはいかがでしょう?
百聞は一見に如かずです
↓
『論理哲学論考』ウィトゲンシュタイン著 野矢茂樹訳